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東京高等裁判所 昭和57年(行コ)277号 判決 1984年9月10日

東京都豊島区千早町一丁目四五番地

控訴人

飯野幸二

右訴訟代理人弁護士

小林亮淳

東京都豊島区西池袋三丁目三三番二二号

被控訴人

豊島税務署長

新谷實

右指定代理人

須藤典明

萩野譲

榊原万佐夫

前崎善朗

山本高志

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和四八年二月一二日控訴人の昭和四四年分ないし昭和四六年分の所得税についてした各更正及び各過少申告加算税の賦課決定をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は、第一・二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文一項と同旨

第二当事者の主張及び証拠

原判決事実摘示及び当審証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

当裁判所は、控訴人の本訴請求は棄却すべきものと判断する。その理由は、原判決の理由と同一であるから、これを引用する。ただし、次のとおり、付加訂正する。

1  原判決二八枚目表四行目の「六三、三五〇円」を「一二九、七一〇円」に、同五〇枚目裏末行の「四人」を「五人」に、同六一枚目裏五行目の「現処分時」を「原処分時」に改める。

2  原判決六四枚目裏二行目の「できない。」の次に、「なお、控訴人は、被控訴人がいわゆる無資格の者を除外して同業者を抽出しているので、本件推計は不合理である旨主張するが、無資格者について、その事業所得金額に対する接待交際費及び福利厚生費の割合が当然に高くなるものとはいえず、むしろ、右費用の性質からいつて、事業所得金額が所得諸控除の合計額を下回るような赤字経営の場合には、収益の上がつている場合に比して、右各費用の支出を節減しようとするのが通常であると推認され、本件において、これと異なる特殊事情が存在することを窺わせる資料もないので、同業者の抽出に当たり、有資格の者に限定して本件推計をしたことにより、控訴人に不利な結果を招来したということはできない。」を加える。

3  当審提出の甲第一九号証の一ないし四五及び甲第二一号証をもつては、右引用にかかる原判決の係争各年分の総収入金額についての認定を覆すことはできない。すなわち、甲第二一号証と対比すれば、甲第一九号証の一ないし四五の請求書は、本件係争各年の控訴人の全売上の一部に関するものにすぎないことが明らかであり、また、甲第二一号証は、その記載によれば、控訴人が右係争各年の売上高を集計したものであることが認められるが、甲第一九号証として提出されている請求書がありながら計上されていないもの(同号証の二、八、二二、二四、三〇、四三)、請求書記載の額とちがうもの(同号証の五、七に関する部分)があり、更に、従来の控訴人の主張とも食い違う部分(例えば、昭和四四年の秀研社につき、一四五万四三七四円を超える部分を否認していたのに甲第二一号証には被控訴人の主張と同額の一七一万六九九六円と、昭和四六年の盛文社につき二一万三八四〇円を超える部分を否認していたのに、これも被控訴人の主張と同額の四四万二八四〇円といずれも計上されており、また、逆に、昭和四六年のトクダエンタープライゼスについては一一万三一七五円である旨の被控訴人の主張を認めていたにもかかわらず、甲第二一号証では空白となつている等)が存在し、到底採用することはできない。

また、当審提出の甲第一六ないし第一八号証、第一九号証の一ないし四五及び当審における控訴人本人尋問の結果も、いまだ右引用にかかる原判決の係争各年分の給料に関する認定判断を左右するに足りないものというべきである。

よつて、原判決は相当であり、その取消しを求める本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉山克彦 裁判官 鹿山春男 裁判官 赤塚信雄)

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